リギングプレートの強度や運用荷重についての表記の意味や考え方について

リギングプレート別名アンカープレートに関する質問を頂きました。

当社では、SMCのリギングプレートコングのアンカープレートロックエギゾチカのボルトリギングプレートなどがあります。

ラリーには、MBSでなくMAXの文字がある

いずれのプレートも考え方は同じで、まず器具の表面に破断強度が記載されています。

上記のヨーロッパ製のリギングプレートは、MAX 36KN(1KNは約100㎏なので3600kg)と書いています。

アメリカの製品には MBSの文字があります。

具体的には、MBS:36KNと記載されていることが多いです。

MBSとは、Minimum Breaking Strength(ミニマムブレーキングストレングス)和訳すると、最小破断強度のことで、通常、破断強度と呼ばれ器具が壊れる強度の最低点のことです(なのでミニマム)。

次に運用荷重ですが、通常レスキューの世界では10倍以上の安全率を取るべきという10倍ルールがあります。

具体的に、人二人の荷重が200KGとすると2000KGの破断強度以上の器具を使うという意味です。

なお、厳密にいうと、重さの単位であるkgと力の単位であるN(ニュートン)は違うのですがわかりやすくイコールと考えても実務上は問題ありません。

よってこの10倍ルールを当てはめると、この36KNのアンカープレートは、破断強度3600kgなので運用荷重は、基本360kgとなります。

ロープレスキューでは、ハイラインが最も大きな運用荷重となることが一般的で、400kgまでかけます。

そうなると10倍の安全率は9倍と少し割り込みますが、概ね10倍あるから「良し」として通常運用されています。

基本があれば例外もある・・・・

ロープレスキューでは、このような例外のルールを含んでいることで混乱される方が多いですが、応用もあり、そんなものと割り切って考えて頂くことをお勧めいたします。

また、物によっては、MBSの文字とWLLの文字があることがあります。

少し見ずらいですが、MBSの文字の下にWLLの記載があります。

WLLとは、Working Load Limitのことで。

最大の運用荷重のことを指します。別の記載では、SWL( Safty Working Load ) の記載となっている場合があります。

上記の製品だとなんと運用荷重は、12.5KNと非常に大きい値になっています。

弱いカラビナだとMBSが24KN等があるので、システム自体の安全率は2倍になってしまいます。

アンカープレートの強度だけでなく、安全のためにはシステム全体の強度を考えることを忘れないようにお願いいします。


その他、ものによっては、MBSの記載が2つある場合があります。

リギングプレートにMBSの記載が2つ

上記の写真を見て頂くと、 MBS 36KN ”G”の文字と

↑が上と下に↓↓↓↓あり、その間にMBS 50KN の文字が見えます。

これは例外でなく、矢印の記載方向にのみ引く場合は、MBSが50KNということです。

矢印以外の方向に引くと、36KNとなります。

ロックエギゾチカのボルトにも矢印方向の記載があり、以下もご確認頂くとわかりやすいと思います。

ロックエギゾチカのアンカープレート



ベーシックリバーレスキュー講習@奥多摩

先日、奥多摩でベーシックリバーレスキュー講習を実施しました。

いままでは、京都保津川でのSRT1や昔は、四国の吉野川でリバーレスキュー講習をおこなっていましたが、奥多摩で初となるリバーレスキューの講習会となりました。

このコースは、2日間で、リバーレスキューの基本となる項目を実施します。ロープレスキューで行うノット、倍力、支点構築などに関する項目はカットして、河川でのレスキュー項目に絞りんでいます。

濃密な2日間を体験して頂けるので、ぜひロープレスキューを学んでいる方にご参加して頂きたい講習会です。

詳細は以下になります。

https://www.rescue-japan.com/SHOP/5113100248.html

今回の様子をアップします。

浅瀬横断では、要救助者を布担架で対岸から対岸へ搬送しました。

浅瀬横断での担架搬送

また、2日間の最後には、ストレーナスイムの体験を行いました。

ストレーナを乗り越えて泳ぐというより、仮設ストレーナに挟まりリスクを実体験することが目的です。

ストレーナスイムの体験

2日間お疲れ様でした。

プルージックコードの食い込みに関する質問と答え

以下のような質問をレスキュージャパンの事務所に頂きました。

Q ロープレスキュー技術について質疑があり、ご連絡しました。

当組織では、ロープについては、11mmのメーカー違いの2種類を主に運用しております。
また、プルージックコードはスターリン社製の7mmプルージックを昨年から使用してます。

先日、活動中にラチェットプルージックがプーリーの中に中に入り込む事象が発生しました。ロープの切断等の事故は発生しませんでしたが、今後も起こりうる可能性があると感じました。

チーム内で質疑が出ました。以下ご回答いただけますか?

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①今回のラチェットプルージックが入り込む事象に関して、同様の事案の発生を確認したことがありますか?

② 7mmプルージックはパーソナルユースと考えていますが、御社のホームページでは11mmに対して7mmのプルージックも適正と記載されていますが、パーソナルユースとして適正というニュアンスでしょうか?

③プルージックコードのスリップロードについての根拠文章は提示いただけますでしょうか?

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回答いたします。

①について

Q .今回のラチェットプルージックが入り込む事象に関して、同様の事案の発生を確認したことがありますか?



A. 過去にプルージックがブレーキマインドレスプーリーに入り込む事例はいく度もあります。ブレーキマインドレス、プルージックマインドレスプーリー、PMP等でよばれるものすべてですが、基本的にはプルージックは入り込まないようなデザインになっていますが、100%入り込まないものではなく、他の敷材も同じですが、運用時には、不具合がないか確認しつつオペレーションを行わないといけません。

特に、プーリーのサイドプレートにプルージックが位置すると入り込みやすくなります。


正しいプルージックの位置





この位置に来るとプルージックは食い込み易くなる


この時は、一旦、オペレーションを停止してプルージックの位置を修正してください。

②について

Q. 7mmプルージックはパーソナルユースと考えていますが、御社のホームページでは11mmに対して7mmのプルージックも適正と記載されていますが、パーソナルユースとして適正というニュアンスでしょうか?

A. 7mmプルージックはパーソナルユースではありません。NFPAの規格にプルージックの規格がないため、そもそもパーソナルでもゼネラルでもありません。

そのうえで、次のご質問とも関連するのですが、2人荷重に対するビレーの落下テストで7mmプルージック3回巻きと11mm ロープの組み合わせが落下実験に合格していることから、2人荷重(レスキューロード)に対応しているものです。

③について

Q. ③プルージックコードのスリップロードについての根拠文章は提示いただけますでしょうか?

A. はい、1980年代に行われた、有名な実験があります。

BCCTR(British Columbia Council of Technical Rescue、ブリティッシュコロンビア州テクニカル レスキュー評議会)の文章があるのですが、インターネットで調べても出てきませんでした。

変わりに、インターナショナルテクニカルレスキューシンポジュウムでのマイクギブスさんの発表データーが有意義だと思いますのでリンクを張っておきます。

RESCUE BELAYS:Important Considerations for Long Lowers



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